大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和41年(ワ)11509号 判決 1968年6月20日

原告

石原みつ

ほか四名

被告

造機車輌株式会社

ほか一名

主文

被告らは各自原告石原みつに対し金一、六一〇、〇〇〇円、原告石原保男、同石原敏子、同日吉桂子に対し各金八四〇、〇〇〇円、原告石原リウに対し金三〇〇、〇〇〇円およびこれらに対する昭和四一年一二月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求および反訴原告の反訴請求をいずれも棄却する。

訴訟費用中本訴の費用はこれを二分し、その一を被告ら、その余を原告らの負担とし、反訴の費用は反訴原告の負担とする。

この判決は、第一項にかぎり、仮りに執行することができる。

事実

原告ら訴訟代理人は、本訴につき「被告らは各自原告みつに対し、金三、八八六、六〇〇円、原告保男、同敏子、同桂子に対し各金一、九五七、七〇〇円、原告リウに対し金五〇〇、〇〇〇円およびこれらに対する昭和四一年一二月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決と第一項につき仮執行の宣言とを求め、反訴被告(以下たんに原告という。)ら訴訟代理人は、反訴につき「反訴原告の請求を棄却する。訴訟費用は反訴原告の負担とする。」との判決を求め、被告らは、本訴につき「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、反訴原告(以下たんに被告会社という。)は、反訴につき「被告会社に対し原告みつは金三四二、四三〇円、原告保男、同敏子、同桂子は各自金二二八、二八六円およびこれらに対する昭和四二年四月一五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は右原告四名の負担とする。」との判決と仮執行の宣言とを求めた。

原告ら訴訟代理人は、本訴の請求原因としてつぎのとおり述べた。

一、昭和四一年六月一四日午後三時五〇分頃、茨城県新治郡千代田村大字上稲吉一、八四八番地先国道六号線上において、被告盆子原は被告会社所有の事業用大型特殊貨物自動車(練八え三一一号、以下被告車という。)を運転して土浦市方面から石岡市方面に向い道路左側(以下下り線という。)を進行中、道路中央に寄りすぎ、車体の一部を中央線をこえて道路反対側(以下上り線という。)に侵入させ、おりから上り線を石岡市方面から土浦市方面に向つて進行中の訴外石原源之輔運転の普通乗用自動車(足立五ぬ三九五六号、以下原告車という。)の前部に被告車の右後部を接触させ、その衝撃により源之輔に対し胸腹部打撲、内臓損傷を負わせ、翌一五日午前七時三〇分頃死亡するに至らせた。

二、(一)右の事故は被告盆子原の過失によるものである。すなわち同被告は被告車を下り線内中央線に近接させて時速五五キロで走行中、前方約六〇米の個所において上り線を中央線に近接して対向走行してくる原告車を発見したのであるから、同被告としてはそのまま進行すればすれ違いの際原告車と接触する危険があることを慮り、原告車との横の間隔を十分に保ち安全に離合することができるように今少し左に寄つて進行すべき注意義務があつたのに、これを怠り漫然同一速度で中央線に近接したまま進行し、原告車の直前に至つてはじめて接触の危険を感じたか突然ハンドルを左に切つたため、前述のとおり被告車の後部を中央線をこえて上り線に入らしめ、もつてその後部を原告車に接触させるという本件事故を惹起させたのである。

(二) 被告会社は被告車を所有し、これを自己のために運行の用に供するものであつた。

三、事故によつて生じた損害はつぎのとおりである。

(一)  源之輔の年収は訴外石原鋳造工業株式会社の代表取締役として金一、八〇〇、〇〇〇円、また訴外墨田信用金庫の理事として金一二〇、〇〇〇円、合計金一、九二〇、〇〇〇円であつたのに対し、同人の生活費は年間金九六〇、〇〇〇円であつたから、差引の純益は一か年金九六〇、〇〇〇円であり、かつ同人は死亡当時六二才五月で健康な男子であつたから、さらに同年令者の平均余命である一三年間生存して同程度の純益を挙げたであろうと考えられるところ、本件事故による死亡によりこれを失つた。いまその失つたと考えられる純益の総額からホフマン式計算方法によつて年五分の割合による中間利息を控除してその現価を求めると、金七、五六〇、〇〇〇円となるから、これから自賠責保険に基づき原告らが支払を受けた金一、〇〇〇、〇〇〇円を控除した残額六、五六〇、〇〇〇円について損害賠償請求権があるところ、源之輔の妻である原告みつ(三分の一)および源之輔の子である原告保男、同敏子、同桂子(各九分の二)が相続分に応じ相続によりこれを承継したのであつて、その額は原告みつにつき金二、一八六、六〇〇円、原告保男、同敏子、同桂子につき各金一、四五七、七〇〇円である。

(二)  原告みつは源之輔の葬儀を営み、その費用として金七〇〇、〇〇〇円を支出した。

(三)  源之輔の死亡により、原告みつは妻、原告保男、同敏子、同桂子は子として、原告リウは母として多大の精神的苦痛を受けた。その慰藉料としては原告みつは金一、〇〇〇、〇〇〇円、その余の原告らは各金五〇〇、〇〇〇円の支払を受けるのが相当である。

四、よつて、被告ら各自に対し、原告みつは前項(一)ないし(三)の合計金三、八八六、六〇〇円、原告保男、同敏子、同桂子は各(一)、(三)の合計金一、九五七、七〇〇円、原告リウは(三)の金五〇〇、〇〇〇円およびこれらに対する本件訴状送達の翌日である昭和四一年一二月七日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

被告ら訴訟代理人は、本訴の請求原因に対する答弁および抗弁ならびに被告会社の反訴請求原因として、つぎのとおり述べた。

「一、本訴請求原因第一項の事実中、原告ら主張の日時場所において、被告盆子原運転の被告車と源之輔運転の原告車とが接触したことおよび源之輔が死亡したことは認めるが、その余は争う。

二、同第二項の事実中、(一)は否認する。(二)は認める。

三、同第三項は不知または否認する。ただし源之輔と原告らとの間の身分、相続関係および原告らが自賠責保険から金一、〇〇〇、〇〇〇円の支払を受けたことは認める。

四、(一)本件事故は源之輔の過失のみによつて惹起されたもので、被告盆子原にはなんらの過失が存しない。また被告会社にも過失がなく、被告車には構造上の欠陥も機能の障害も存しなかつた。

(二) 本件事故現場は道路幅員約一五米、うち上り線は幅員約九・六米、下り線は幅員約五・四米で、上下線の境界には白い中央線が引かれ、ゆるやかなカーブ(上り線から見れば左カーブ、下り線から見れば右カーブ)をなし、制限速度は時速五〇キロ、事故当時上り線には数台の自動車が前後相接して走行していたが、下り線は被告車(二号車)およびこれと同型の被告会社の車(一号車)の二台のみが走行していた。被告盆子原は被告車を運転して、先行する一号車の後方を追随してその約一〇米後方を下り線上中央線から三〇ないし四〇センチ内側を時速約五〇キロで進行して本件事故現場に差しかかつた。おりから上り線上中央線から一・五米位の内側を三台の大型貨物自動車が相次いで時速約五〇キロで走行していたが、その後方に時速七〇キロ位で進行して右三台の貨物自動車を一気に追越そうとして中央線をこえ、車体の一部を下り線に侵入させて進行してくる原告車を約五〇米前方において発見したので、被告盆子原は一号車が左にハンドルを切つてこれを避けたのにならつて左にハんドルを切つたが、原告車が速度も進路も変えずにそのまま進行してきたので本件事故に至つた。

(三) 従つて源之輔には追越し不適当、中央線をこえ反対側車道に侵入、制限速度違反、ハンドルまたはブレーキ操作不当などの過失があり、専ら右の過失によつて本件事故が発生したものであつて被告盆子原には全く過失が存しない。

五、前述のとおり被告盆子原は被告車を左に寄せて原告車を避けようとし左にハンドルを切つた直後原告車に接触されために、ハンドルを元に戻すことができず、被告車はそのまま暴走して道路傍の下水溝をのりこえ電柱に打ち当つて漸く停止しえたが、これによつて被告車の前部は使用不能の程度に大破した。

六、被告車の大破によつて被告会社はつぎのような損害を受けた。

(一)  うべかりし利益の喪失金一、七〇六、九四〇円

被告会社は被告車を訴外日本鉱業株式会社から請負つた日立市の同社日立鉱業所から東京都北区浮間町の東洋化学薬品株式会社へ硫酸を輸送する毎日の定期便として使用し、一か月平均二五日稼働させて平均月収金四八八、六九九円をえ、この収入をうるための諸経費は一か月金二〇四、二〇九円であつたから純益は一か月金二八四、四九〇円であつた。しかるに被告車は使用不能となつたため、被告会社は新車を代替車として購入し、これにシヤシー、タンクローリーを取付け、昭和四一年一二月一九日から稼働させることができるようになつた。従つて被告会社は事故当日から新車稼働までのほぼ六か月間につきうべかりし利益合計金一、七〇六、九四〇円を失つた。

(二)  被告会社において自動車運転手の日給は金一、九〇〇円であるところ、右のように代替車が完成するまでの間、被告会社は運転手を他の車の整備注油等日給金八〇〇円程度の者にさせるべき仕事に従事させるのやむなきに至り、その差額である一日につき金一、一〇〇円の割合によるすくなくとも一五〇日分の金一六五、〇〇〇円の余分の支払を余儀なくされた。

(三)  よつて被告会社は源之輔に対し、右(一)、(二)の合計金一、八七一、九四〇円の損害賠償請求権を有するところ、同人の死亡により原告みつは三分の一、原告保男、同敏子、同桂子は各九分の二の相続分をもつて源之輔の負担する債務を承継した。よつてうち金一、〇二七、二九〇円につき賠償を求めることとし、その相続分に応じ原告みつにつき金三四二、四三〇円、原告保男、同敏子、同桂子につき金二二八、二八六円およびこれらに対する反訴状送達の翌日たる昭和四二年四月一五日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

原告ら訴訟代理人は、被告らの抗弁および被告会社の反訴請求原因に対する答弁として、本訴の請求原因として陳述したところのほかつぎのとおり述べた。

「一、被告らの答弁第四項(一)の事実中、源之輔に過失が存し、被告らには過失が存しなかつたとのことは否認する。被告車に構造上の欠陥や機能の障害が存しなかつたことは不知。

二、同(二)のうち、本件現場の状況および被告車の前方に被告会社の他の大型貨物自動車が走行していたことは認める。制限速度および被告車の速度が時速五〇キロであつたことのことは否認。被告車は最高速度をこえた時速五五キロで走行していた。その余は否認する。

三、同(三)は否認。

四、同第五項は認める。

五、同第六項(一)、(二)は不知、(三)は相続の点のみ認める。

〔証拠関係略〕

理由

一、まず本訴について判断する。昭和四一年六月一四日午後三時五〇分頃、茨城県新治郡千代田村大字上稲吉一、八四八番地先国道六号線上において、土浦市方面から石岡市方面に向い下り線を進行中の被告車と石岡市方面から土浦市方面に向い上り線を進行中の原告車とが接触したことは、当事者間に争いがない。そして右の事実と原告石原みつ尋問の結果によれば、右事故の結果原告車を運転していた訴外石原源之輔は全身打撲の重傷を受けたことが認められるところ、同人が翌一五日午前七時三〇分頃死亡したことは、当事者間に争いがない。

二、本件事故現場は道路の幅員約一五米であり、うち上り線は約九・六米、下り線は約五・四米(ただし〔証拠略〕によれば、上り線のうち南東側幅員四・二米の舗装部分は道路としては一般に使用されていなかつたことが認められる。)で上下線の境界には白く中央線が引かれ、(〔証拠略〕によれば、中央線上には道路鋲も設置されていた。)ゆるやかなカーブ(上り線から見れば左カーブ)をなし(〔証拠略〕によれば見通しは良好であつた。)ていることは当者間に争いがない。

そして〔証拠略〕によれば、被告盆子原は被告車を運転して、同じく被告会社所有の被告車と同型の一号車の後方に約六米の間隔をおいてこれに追従し、時速約五五キロで下り線を走行し事故現場手前にさしかかり、車体右側を中央線すれすれの位置において進行していたところ、上り線において先行の貨物自動車を追越すため、同じく車体右側を中央線すれすれの位置に寄せて対向走行してくる原告車を約五〇米前方に認め、また下り線を中央線寄りに先行していた一号車が原告車との接触の危険を避けるべく急に左に寄つたのを見ながら、原告車の方で被告車を避けるであろうと軽信してそのまま直進を続行し、原告車との間隔が二〇米位となつたとき、はじめて危険を感じて左にハンドルを切つたが、すでにおそく、およそ中央線上付近において(源之輔が原告車を中央線をこえて下り線に侵入させたとのことは認め難い。)被告車の後部右側車輪の付近を原告車右側前部に接触させるに至つたことが認められる。

以上の事実によれば、被告盆子原としては今少し早めにハンドルを左に切つて中央線との間隔を広めにおいて進行し、状況によつて減速をして上り線内の中央線近くを進行してくる原告車との接触を避けるべき注意義務があつたのに、これを怠つた過失があり、これによつて本件事故発生に至らしめたというべきである。

よつて被告盆子原は直接の加害者として、本件事故発生に至らしめたというべきである。

よつて被告盆子原は直接の加害者として、本件事故によつて源之輔ないしその遺族の蒙つた損害の賠償をなすべく、また被告会社が被告車の運行供用者であつたことは当事者間に争いがなく、盆子原の過失が右のように認められる以上、被告会社の免責の抗弁が理由がないことは明らかであるから、被告会社もまた同様損害の賠償をしなければならない。

もつとも源之輔としても、被告車が下り線の中央線に接近して進行してきているのであるから、原告車を運転して上り線を進行するにあたり中央線に接近しすぎることなく、これといくばくかの間隔をおき、もつて被告車との接触を避けるべき注意義務があつたのにこれを怠り漫然と直進した過失があり、これが本件事故発生の一因となつたというべきである。従つて源之輔の右の過失は被告らが賠償すべき損害額を定めるにつき斟酌さるべきであり、双方の過失の割合は以上認定の事実関係からするとおよそ源之輔四、被告盆子原六と認めるのが相当である。

三、以下において、本件事故に基づき源之輔が負傷し死亡したことによる損害を判断する。

(一)  〔証拠略〕によれば、源之輔は事故当時六二才の健康な男子で、原告ら主張のとおり、訴外石原鋳造工業株式会社代表取締役および訴外墨田信用金庫の理事として年収金一、九二〇、〇〇〇円があつたことが認められ、その生活費が年収の五割に相当する一か年金九六〇、〇〇〇円であつたことは原告らの自認するところであり、同人は本件事故にあわなければ同年令者の平均余命一三年の約半分にあたる七年程度はなお稼働して収入を挙げえたであろうと認められるので、差引純益として一か年金九六〇、〇〇〇円の七年分を死亡によつて失つたというべく、いま同人のうべかりし純益の総額からホフマン式計算方法(複式)によつて年五分の割合による中間利息を控除して現価に換算すると金五、六三〇、〇〇〇円(金一〇、〇〇〇円未満切捨て)となるところ、これに対し源之輔の前示過失を斟酌すると源之輔の有した逸失利益による損害賠償請求権は金三、四三〇、〇〇〇円と認められる。そして原告らがこれから控除さるべきことを自認する自賠責保険による金一、〇〇〇、〇〇〇円を差引くときは、残額は金二、四三〇、〇〇〇円となる。そして原告みつは源之輔の妻、原告保男、同敏子、同桂子は源之輔の子であつて、源之輔の死亡により原告みつは三分の一、子である原告らは各九分の二の割合をもつて相続により源之輔の有する権利義務を承継したことは当事者間に争いがないから、逸失利益に基づく損害賠償請求権として、原告みつは金八一〇、〇〇〇円、原告保男、同敏子、同桂子は各金五四〇、〇〇〇円を有するものと認められる。

(二)  〔証拠略〕によれば、原告みつは源之輔の葬儀等のため金七〇〇、〇〇〇円以上を支出したことが認められる。しかしそのうち金二〇〇、〇〇〇円については領収証がないため具体的な支払項目および支払先が明らかでなく、また領収証(甲第四号証の一ないし六一)の存する合計金五〇六、六二〇円の支出についてもその使途が必ずしも明確でないものが多く、個別にその支出が被害者の社会的地位に応じて相当か否かを判断することは困難である。よつて前記認定の源之輔の職業、年収およびその他の事情を考慮し、さらに前示被害者の過失を斟酌して金二〇〇、〇〇〇円を限度として、その範囲において原告みつの葬儀費用の支出を被告らから賠償を求めることをうべき相当因果関係ある損害と認めることとする。

(三)  前認定のとおり、原告みつは源之輔の妻、原告保男、同敏子、同桂子は源之輔の子であり、原告石原みつ尋問の結果によれば、原告リウは源之輔の母であることが認められ、そのような身分関係にある原告らが源之輔の死亡により多大の精神的苦痛を受けたことは容易に推認されるところである。その苦痛に対する慰藉料としては本件にあらわれた一切の事情を考慮し、さらに源之輔の前示過失を斟酌するときは、原告みつにつき金六〇〇、〇〇〇円その余の原告らにつき各金三〇〇、〇〇〇円とするのが相当である。

四、よつて被告らは各自原告みつに対し、前項(一)の金八一〇、〇〇〇円、(二)の金二〇〇、〇〇〇円、(三)の金六〇〇、〇〇〇円、以上合計金一、六一〇、〇〇〇円、原告保男、同敏子、同桂子に対し各前項(一)の金五四〇、〇〇〇円、(三)の金三〇〇、〇〇〇円、以上合計各金八四〇、〇〇〇円、原告リウに対し前項(三)の金三〇〇、〇〇〇円およびこれらに対する本件訴状送達の翌日であること明らかな昭和四一年一二月七日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務があり、本訴各請求は右の限度において正当として認容すべく、その余は失当として棄却すべきものである。

五、つぎに、反訴について判断する。本件事故の発生については源之輔の過失もその一因となつていたことは前認定のとおりであり本件事故により被告車が大破したことは当事者間に争いがない。

よつて源之輔はこれによつて被告会社に生じた損害を賠償すべき義務があるとしても、その損害額について被告会社の主張するところは、本件にあらわれた全証拠によつてもこれを認めることができないので、損害額を算定するに由がないといわねばならない。

結局反訴請求はすべて理由がないことに帰するから、これを棄却すべきものである。

六、よつて本訴および反訴費用について民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言について同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉岡進)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例